トコジラミとは


トコジラミ(床虱。学名:Cimex lectularius 英語:Bed bug)
別名:ナンキンムシ、床虫(トコムシ)
トコジラミ(ナンキンムシ)は名前には"シラミ"とつきますが、実はシラミの仲間ではなくカメムシの仲間です。成虫の体長は5~8mm程度、体の色は茶色で、上から見ると丸く、横から見ると薄い体型をしています。
吸血性の虫で、刺されると非常に強い痒みを生じ、また吸血箇所は赤く蚊に刺されたような痕が長期に渡って続きます。
例年、被害が多い時期は6~9月ですが、冷暖房設備の発達に伴い、今では1年中発生することが報告されています。寿命は10カ月程度で、メス成虫は毎日5~6個程度の卵を約3カ月間に産み続けるため、死ぬまでに500個以上を産卵し大繁殖するのです。
トコジラミは基本的に夜行性のため、成虫・幼虫ともに昼間は壁や床板の隙間、ベットやじゅうたんの裏などの狭い隙間に群れで潜んでいますが、夜になると徘徊して人から吸血します。



トコジラミが増えた原因
― 海外から日本への持ち込み ―


日本国内では今から半世紀以上前の戦時中には生息していました。年配の方には"ナンキンムシ"の名称が一般的かもしれません。当時はシラミなどの防疫対策ように使用していたDDTという粉状の薬剤(現在は使用禁止)が効果的であり、一時は日本では絶滅したとも云われました。
しかしここ数年、国内でのトコジラミ被害の相談が増え続けています。これは海外でのトコジラミ被害の増加との関係が推測されます。
近年、アメリカやカナダ、オーストラリア、EU諸国などでトコジラミ被害の増加が顕著に表れています。特にニューヨークでは2010年の市保健局への苦情件数は12,768件にも上り、ニューヨークの家庭の10人に1人が被害を受けているとも言われているほどです。
観光ビザの緩和や円安などが追い風となり、2003年に521万人だった訪日外国人旅行者は2013年には1000万人を突破しました。
同時期に海外でのトコジラミの大発生が起こったため、訪日する外国人旅行客の荷物や衣服にトコジラミが付着したまま日本へ持ち込まれたものと考えられます。
また2020年の東京オリンピック開催が決定したことにより、今後更なるインバウンドの増加は確実視されています。トコジラミに関しても増加の可能性が非常に高いので、十分な注意が必要です。
― 現在は日本人同士の媒介も増加中 ―


2~3年前は外国人の宿泊するホテルや旅館等の宿泊施設からの駆除依頼が非常に多かったのですが、最近は一般家庭からのご依頼が非常に増えています。戸建住宅やアパート、マンションなど、建物の構造に関係なくトコジラミ被害の相談が増加傾向にあります。
また「ここ何年も海外には行っていない」という相談者も非常に多いです。これは" 海外⇒日本" という図式を超え、"日本人⇒日本人"というルートでトコジラミが移動し繁殖していることを示しています。
日本国内での宅配便等での荷物に紛れ込むケース、泊まった国内の宿泊施設から持ち帰ってくるケースなど原因はさまざまです。
また最近では貧困者支援対策用の簡易宿舎やグループホーム、社員寮や学生寮などの共同生活をする建物で多数の人が同時にトコジラミに悩まされるケースが目立ちます。
トコジラミは自然発生しません。しかし一度棲みつかれてしまうと爆発的な繁殖力で増加しますから、早期解決が大切です。
― 市販の殺虫剤が効かない? ―


現代のトコジラミの多くは、ドラッグストアやホームセンターで販売している市販の殺虫剤への抵抗性を示しています。市販のエアゾール剤や燻煙剤の有効成分であるピレスロイド系の薬剤では効果は期待できません。
「まずは自分でなんとかしてみよう」と皆さんあの手この手を使ってみたものの、結局効果なく被害が拡大し、最終的に諦めてプロの駆除業者に相談…。というケースをよく耳にします。
前述の通り、トコジラミは毎日産卵します。ご自身で対策をしている時間の分だけ被害が進行してしまうということです。
駆除業者が使用できる有機リン系やカーバメート系の薬剤など、効果的な薬剤もあります。
トコジラミは一般人には駆除のできない特殊な害虫です。我慢せずにプロにまずご相談ください。
ダニ・ノミとの違い
姿形 | 体長 | 特徴 | 寿命 | |
---|---|---|---|---|
トコジラミ | ![]() |
5~8mm | ①肌が露出しているところを刺す ②暗い時間帯を好む ③初めて刺された時は痒みが出ない ④2~3回目以降に刺されたころから強い痒みや発疹が出る |
10ヵ月~1年 飢餓状態でも半年以上生きる |
ダニ | ![]() |
1mm以下 | ①肌が露出していないところを刺す ②皮膚の柔らかい脇の下、お腹、 二の腕などがよく刺される ③高温多湿を好む |
2週間~2ヶ月程 |
ノミ | ![]() |
2~3mm | ①主に膝から下が刺される ②ピョンピョン跳ねるので目視可能 ③ネコの生息範囲に大量発生 ④昼間も活動 |
3ヵ月~1年 飢餓状態でも1週間~1ヵ月生きる |
トコジラミもダニ・ノミ同様に吸血被害を及ぼすことから区別がつきにくいのですが、トコジラミが一番大きいため、目視により判別が可能です。
トコジラミはその体の特徴を活かし、あらゆる隙間に生息しているため、ダニやノミと違い市販されている薫煙剤やエアゾール剤(ピレスロイド系)などの薬剤が効きにくく、また薬剤処理が広範囲に渡るため、駆除が非常に困難です。
トコジラミ成長図

トコジラミは不完全変態なので、幼虫から成虫までほぼ同じ形をしています。吸血をしては脱皮を繰り返し、孵化から約2カ月で成虫に成長します。
孵化直後の幼虫は1.5㎜と小さく、また半透明なため目視では発見しづらいです。
トコジラミは毎晩吸血するわけではなく、一度お腹いっぱいまで吸血すると数日間は隙間に隠れて出てきません。とても"低燃費"な虫なのです。
またメスは一度交尾をすると毎日5~6個産卵します。一匹のトコジラミは生涯で200~500個の卵を産むので、爆発的な繁殖力の持ち主なのです。(計算上は6か月後には10万匹に!?)
トコジラミの好きな環境
気温:25℃前後
湿度:60~85%